グリーングリーンSS@PS2 「片恋」






「はあ……」
「どうしました、お姉さま」
「……なんでもない。あっち行ってて」
「はっはい。……すみません」
 あたしの言葉に、若葉はシュンとした顔をして下がる。
「はあ……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あのね、若葉」
「はいっ、お姉さま何でしょうか?」
「あたし、『あっち行ってて』とは言ったけど『部屋の隅でサボテン抱えてイジイジしてて』とは言ってないでしょ?」
「すっ、すみませんお姉さま。でも、その……あの……」
「なあに? 言いたいことがあったらはっきり言いなさいよ」
「……その……お姉さまが……心配で……」
 若葉はサボテンの影から、怯えたように顔を出す。
「まったくもう……」
 あたしはふう、とため息をつく。
「……大丈夫だから。そんなに暇なら、洗濯してきて」
「はいお姉さま、行って来ます」
 仕事を与えられたのが嬉しいのか、若葉はすぐに洗濯物を袋に詰め始める。
「お姉さまの〜ぱんつと〜ぶらじゃーと〜」
「歌わなくていいから、さっさと行って来なさい!」
「はっ、はいっ」
 あたしが怒鳴ると、若葉は素早く準備をして部屋を飛び出していった。
「あの子に歌を教えたの、間違ったかな……」
 などと余計なことを考える。
「はあ……」
 ため息をつく。
「……高崎……祐介……」
 あいつの、名前。
 あのとき、自分のワイシャツをかけてくれた。
 あたしが、あいつを指名したのに。
 あたしのせいで、泥レスなんかやる羽目になったのに。
 あいつは、一言もあたしを責めたりしなかった。
 本当は「ありがとう」と言えれば良かったのに。
 あいつの顔……まともに見られなかった。
 なんか、心臓がドキドキして。

 だから、花言葉で伝えようと、あたしは式神を送った。
 感謝の思いを込めて。

「高崎……祐介……」
 もういちど、つぶやく。
 轟に捕まったとき、母校に連絡されそうだったあたしを、何故かあいつはかばった。
『朽木さんは、悪くありません』
 ワケがわからなかった。
 どうしてあたしなんかをかばうのか、見当もつかなかった。
『……男だからだよ』
 ぶっきらぼうな物言い。引かれてしまった境界線。
 今まで自分が考えていた『男』とは、違う存在。

「はあ……」
 ため息をつく。そのたびに、あたしの心はあいつで埋められていく。
「祐介……」
『双葉……』
 純白のウェディングドレスを身にまとった私と、タキシード姿の祐介が歩く。
 鳴り響く鐘。
 から〜ん、ころ〜ん。
 そう。遠くまで響きわたるような、鐘ノ音。
 ……鐘ノ音?

「……なに? 妄想?」
 我に返る。
 おかしい。あたしの中のなにかが、壊れている。
「はあ……」
 ため息をつく。ふと顔を上げると、ハンガーに掛けられているあいつのワイシャツが目にとまる。
「……かえ……さなきゃ……」
 つぶやく。でも、手にはとらない。
 あいつとの、思い出。
 今のところ、たった一つの。

「かた……おもい……か……」
 つぶやいて、鏡を見る。
 そこには、ため息をつく自分の顔。

「……うん」
 鏡に向かって、微笑む。
 やっぱり、あたしは高崎が好きなんだ。
 この気持ちは、きっとそうなんだ。
 ならば、私はその想いに向かって進むだけ。

 心の中で、回り続ける。
 片恋の、はなびらが。

 くるくると。

 回り続ける。

「……そうだ」
 今夜も、花を届けよう。
 精一杯の、想いを込めて。

 あなたが、気づいてくれますように。





 俺が望む後書き

 と、いうわけで双葉聖誕祭対応のSSです。
 タイトルにもあるとおり、いちおうPS2対応ですがまあ、PC版にもいるキャラなので問題ないかと。
 双葉というキャラは、自分が若葉派であることもあって貧乏くじを引くことが多いのですが、実は誰よりも可愛いキャラだとおもいます。
 ……だから、いじくりがいがあるんだよなあ……。

 ま、次回はなんとかハッピーエンドの話をかければな、と思いますので、首を長くしてお待ちいただければと思います。

 では、次の作品で。

 2003.08.28 なんとかまにあった ちゃある

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