朽木若葉 誕生記念SS ずっと……(暫定版)
遠くまで響く、鐘の音。
開く扉。
私は、今日───
───高崎若葉に、なる。
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「就職したかと思ったら、もう結婚かよ」
そう言ったのは、一番星先輩。
「ああ、無事就職できたら結婚しようって、決めてたんだ」
と、高崎先輩……じゃなかった。祐介さんが答える。
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出会ってから、五年。
祐介さんは一浪して大学に行き、私は鐘ノ音学園を卒業した後お花屋さんのアルバイトを始めた。そして、祐介さんは大学を卒業して無事就職。私もアルバイトから正社員に昇格した。
言われたのは、その年の五月。
「若葉ちゃん。結婚しよう」
「……でも」
障害はたくさんある。私はお姉さま───朽木双葉に創られた式神で、人間ですらない。けれど祐介さんは、それがなんでもないことのように笑った。
「何とかなるよ。今までだって、何とかなったじゃないか。な、結婚しよう」
「……はい」
そして私たちは、明日、式を挙げる。
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「……しかし誰だ? 鐘ノ音学園で結婚式を挙げようなんて考えた奴は」
祐介さんの言葉に、集まったみんなが顔を見合わせる。けれどその問いに答えられる人はいなかった。
みんなで話していたときに鐘ノ音学園の話になり、気がつけばそこで結婚式を挙げる話になったと、そういうわけなんです。
「ま、いいんだけどさ。あそこは、俺と若葉が出会った場所だからな」
祐介さんはそう言って私を見る。
「そうですね」
私は照れながらも、笑顔を返す。
「おいどんも早く彼女が欲しいでごわす〜」
私たちの様子を見ていた天神先輩が、うらやましそうな目で私たちを交互に見る。
「そういうのは、運命だからな」
「ま、気長に待つっしょ」
「樹どんもバッチグーも、もう彼女がいるからそんなことが言えるんでこわすよ」
天神先輩が涙目で言う。確かに小林先輩も伊集院先輩も、すでに恋人がいる。伊集院先輩は春乃先輩とまだお付き合いしているし、小林先輩は───。
「ねえ樹。私たち結婚したら、高崎は私たちの弟になるんだよね」
「ああ、そういえばそうだね」
なんと、双葉お姉さまとつき合っているのだ。
「げげ、そう言えば……って、朽木はどっちにしても義理の姉になるんだよな」
「あははは、今日から高崎のこと、弟くんって呼ぼうかな」
「うわあ、やめてくれぇ」
祐介さんの大げさなアクションに、みんなが笑った。
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「……みんな、呼んだんだ」
「はい! お世話になった方々ですから」
私は元気良く返事をする。
「だからって……総長や轟まで呼ぶかね?」
「私たちがお世話になった人ですから」
「……そっか、そうだよな」
若葉はそういうヤツだったよ、と祐介さんは笑った。
「その、ドレス……やっぱ似合うな」
純白の、胸元の大きく開いたウェディングドレス。お姉さまと一緒に選んだドレス。
似合うって言ってくれたことが、嬉しい。
「さあ、行こう」
「はい」
祐介さんの言葉に頷き、私は祐介さんの手を取った───。
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「若葉、ねえ若葉」
その声に、私は飛び起きた。
「お、お姉さま? あれ? ウェディングドレスは」
「はあ? 何寝ぼけてんの? アンタやっぱ高崎に会ってから、おかしくなってんじゃない?」
お姉さまは呆れた顔で、私を見る。
言われて周りを見ると、そこは見慣れた教室だった。
「……夢でしたか……」
「何? 夢なんか見てたの?」
「はい……」
「やっぱアンタ、おかしくなってるわね」
「……そうかもしれないですね」
「んー、ま、いっか。とにかく帰るわよ。まったく、なんであたしがアンタを迎えに来なくちゃならないのよ」
「すみませんお姉さま」
「罰として、帰ったら歌ってもらうからね!」
「はい!」
私はお姉さまの後をついて行く。
あの夢は……。
あれ、思い出せない。
でもたしか、高崎先輩の夢だったと思う。
どうして高崎先輩の夢を?
わからない。
わからない、けど。
心の中を、高崎先輩が占めている。
そして私の心を、きゅんと鳴らしている。
end
僕が望むあとがき
殺人スケジュールの中、若葉ちゃんのために書きました。生誕記念です。
……殺人スケジュールだったので、暫定版がせいぜいでしたが。
一応完全版を書く予定です。オチも夢オチから変えるかも知れませんし、結婚式を細かく書きたいかな、とか思ってます。
……オンリーイベントに出そうかな?
では、また次の作品で。
2002.05.24 ちゃある