千歳みどり 誕生記念SS 永遠に……  遠くまで響く、鐘の音。  開く扉。  私は、今日───  ───高崎みどりに、なる。  + 「先生と結婚か、年上ってのはいいな」  結婚式の前日、みんなで集まった。そこでそう言ったのは、一番星君。 「ああ、いいもんだぜ」  と、祐介君が笑って答える。 「ま、一番先に墓場に足をつっこむとはな。てっきり俺は、バッチグーかと思った けど」 「おれもすぐに結婚したかったっしょ。でも亜理紗が大学を卒業するまで待つって 決めたっしょ」  がっくりとうなだれるバッチグーこと伊集院君。彼は今、北海道の牧場で働いて いる。 「相手がいるだけいいでごわすよ。おいどんはまだ独り身でごわす」  天神君はおろろ〜んと泣き出す。まあいつものことなんだけど。 「ま、個人的にはいろいろあるかもしれないけど、しっかり祝わせてもらうよ」  そう言って、一番星君は祐介君の肩を叩いた。  ++  祐介君は高校を卒業した後、調理師の専門学校への道を選んだ。なんでも「料理 はみどりに任せられない」っていうのが動機だったらしいけど、それってひどくな い?  無事に卒業して、今年からは地元のホテルの従業員として働いている。仕事はま あまあらしいけど、まだ見習いだからなのかな、愚痴も多い。  そして一年後、まだ桜の舞う季節に、祐介君は私をしっかりと見て、言った。 「───結婚しよう」 「……はい」  私に断る理由なんかなかった。もう私は、未来には戻らないのだから。いや、 未来にはもう───。  ───戻ることができないのだから。  そして、私たちは今日、結婚する。  +++ 「……あ〜あ、結局祐介はみどりのもの、か」  残念そうな口調とは裏腹に、双葉ちゃんの顔には笑みが浮かんでいる。  ここは新婦の控え室。予算のない結婚式は、友達みんなで作ろうってことになっ た。私が着ているウエディングドレスは、なんと若葉ちゃんのお手製。胸元が大き く開いたドレスは少し恥ずかしいけれど、誰もがきれいだって言ってくれたことが 嬉しい。 「どうですか? みどり先輩」 「あ、うん。いいんじゃないかな」  若葉ちゃんの言葉に、私は鏡を見て確認する。 「ね、みどり。あんた祐介と結婚するんだから、ちゃんと幸せにならないとだめだ よ? じゃないと、祐介を奪いに行くからね」 「えへへ、残念でした。もう幸せだから双葉ちゃんの出る幕はありません」 「ちぇっ、所詮勝ち目のない戦いだったってことよね」  双葉ちゃんは頭を掻く。そして、二人で笑った。 「そろそろ、時間ですよ」 「……うん」  若葉ちゃんの声に、ゆっくりとうなずく。  扉の向こうには、祐介君が待ってる。  そして、私たちの未来が。 「……すうっ」  私は深呼吸を一つすると、未来への扉を開けた。  おわり。  僕が望むあとがき  千歳みどり生誕記念。ほぼ即興SSです(笑)  若葉ちゃんの時のネタが結婚だったので、みどりも同じにしました。導入がほぼ 一緒なのは意図的です。  ま、ほかのキャラもこんな感じで書けたらいいな、と。  では。  2002.08.14 間に合いましたか? ちゃある