双葉生誕記念SS「花言葉は───」
遠くまで響く、鐘の音。
開く扉。
私は、今日───
───高崎双葉に、なる。
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「結局双葉ちゃんは祐介のものかぁ〜」
心底残念そうな顔でため息をついているのは、一番星。
確かに祐介とつきあい始めても、何かと顔を出してたっけ。
最初は嫌だったけど、今は好意を持ってくれてることが素直に嬉しいと思える。
でも、ゴメンね。
あたしは、祐介のモノなんだ。
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あたしは三年で鐘ノ音学園に編入し、祐介と一緒に都内の大学に入った。
そして、結婚。
当然ながら父親には猛反対されたけど、私は譲らなかった。
さんざん喧嘩した結果。あたし達は大学卒業と同時に駆け落ちのような形で籍を入れた。
そして三年。
ようやく親に許された私たちは、披露宴をすることになった。
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「いいわぁ〜、亜里紗もこんなドレス来たかったぁ〜」
「亜里紗ちゃんは、着物だったもんね」
「そうなのよぉ〜。この胸が収まるドレス、無くてぇ〜」
その言葉は無意識だろうけど、あたしのハートにぐさぐさと突き刺さる。
……揉めば大きくなるって聞いたから、祐介にたくさん揉んでもらったのに……。
…………。
結果は、言わないでおこう。
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結論から言うと、披露宴は楽しかった。
若葉が「風邪引いてラブ」を熱唱(一番星のギターと樹のキーボードがバックだった。いつの間に練習してたんだろう)したり堀田先輩がスピーチをしてくれたり。まあ、天神が暴れ出したり毒ガスが手品の失敗で爆発を起こしたりってのもあったけど、それはいつものことだからって許容できた。
みんな、あたし達を祝ってくれているのだから。
そして、何よりも両親に「おめでとう」と言ってもらえたことが嬉しかった。あれだけ頑固だった父が、優しい顔で祝ってくれた。あたしは嬉しさのあまり、大粒の涙をこぼしてしまった。
最後に、来てくれたみんなに鉢植えの花を、ひとつずつ手渡した。
それは誰もが知っている、紫の花。
「花言葉は……何?」
「え?」
祐介が、渡しながら尋ねてきた。
「双葉がこの花を渡すって決めたとき、きっとこの花には意味があると思ったんだ。だから、なんだろうなって」
この花の意味。
「それは───」
あたしは祐介の耳に、そっと花言葉を囁いた。
おわり
君が望む後書き
ええと、双葉SSモノホンバージョンです。ギリギリまでかかったけどやっと書けました。
一応若葉、みどりと同じパターンを繰り返したので双葉も例にならいました。どうでしょうか?
ま、幸せな双葉を描けたから良いな、と。
追伸:花と花言葉については聞くな(笑
2002.08.28 ちゃある