君が望む永遠 アナザーストーリー 「君が望まなかった永遠」
君が望まなかったあとがき
終わりました。
……長かった。
たったこれだけを書くのに、一年以上かかってしまいました。
でも、ようやく肩の荷を降ろすことができそうです。
では、ちょいと裏話を。
1.きっかけ
僕は妊娠エンドが嫌いで、どうしてこれが「バッドエンド」じゃないのかずっと不思議でした。
そんなとき、僕の尊敬する維 如星師匠が予告編ぽいネタを書いたのを読み「じゃあちょっと書いてみよう」と。
なお、妊娠エンドは匿名のMこと萌木師匠が書いた「僕のお母さん」が良い作品だと思います。僕なんかとてもとても。
2.エンディングは決めてませんでした
そんな先のことまで決まっていたら、もっと早く終わってます(苦笑)
……っていうか、途中から想定していた話を大幅に逸れて(ぇ
3.主人公は遙海のつもりだった
遙が本当の母と知る→苦悩する。とか、遙の苦悩を感じ、俺が支えると言う、とか、素っ気ない振りをしつつ遙が好き、とか考えていたんですが、結果はなんとも微妙に薄いキャラに。
4.葉月は勢いで生まれたキャラ
遙海と遙を主軸にする作戦が失敗に終わり、遙海が不遇の道を進みそうだったので追加したのが葉月です。
もっとも、ここでは(急遽入れたのもあって)大活躍とは行かないのがわかっていたので、一応続編を書く際の複線として登場させました。
5.遙の落下シーンは慎の視点で書いていた。
全部書いてから、構成の変更により全書き直ししました。
蛇足ですが最後に載せておきます。
……こんなところで。
正直、書いている最中に結婚、家購入、就職先がつぶれるなどいくつかあった山も、何とか乗り越えて書ききることができたのはみなさんのおかげだと思います。
ここまで読んでいただいて、本当に、感謝しています。
ではでは、もし次があるならば、そのときに。
2004.09.28 たったこれだけで、自己最長の小説なんです。 ちゃある
おまけ。三章の遙視点途中を慎視点で書いてみました(ってか、こっちが初期バージョン)
そのとき、
僕は駆け出していた。
そして。
叫んでいた。
ずっと、好きだった。
彼女の、名前を。
「遙!」
斜面に吸い込まれるように、倒れていく彼女の身体。
もう、間に合わない。
だから、僕は。
彼女を追って、跳んだ。
「慎!」
遠くで、遙海兄ちゃんの声が聞こえた、気がした。
でも、僕にはその言葉に応える余裕はない。
見るのは、目の前の彼女のみ。
「遙!」
もう一度叫ぶ。
両腕が、彼女を捉えた。
そのまま包み込むように、抱きしめる。
眼下に、古ぼけた校舎が見えた。
そして、目の前の大地が。
───急速に、近づいてきた。
「!」
身体を丸める。彼女を護るように。
「がっ」
予想以上の衝撃が、僕の身体を襲った。
肺の中の空気が、一気に持って行かれる。
それ以降は、声も出なかった。
ただ、ただ、為すすべもなく、身体中をナニカに削られていく感覚。
やっぱり、物理法則には抗えないと知る。
でも。
彼女は、僕が護るんだ。
腕の中にいる、彼女は。
「……くん」
誰かに、呼ばれた気がした。
「慎くん……」
これは、遙さんの声。
「ぐっ……」
全身を襲う激しい痛みと共に、意識を取り戻す。
目を開けると、目の前に遙さんの顔があった。
「……どうして……」
遙さんは、目に涙を浮かべていた。
「どうして、私を助けたりしたの……?」
訴えかける遙さんの頬から、血が流れていた。
「ごめん……なさい」
言葉を紡ぐ。
「顔に……傷……つけちゃいましたね……」
「なんで……? なんで私なんかのために……」
涙が、頬を伝わる。
「私なんて……もう、どうでもいいのに……私の居場所は……どこにもないのに……」
僕の胸に、涙が落ちた。
「……好きだから」
「……え?」
「好きです……初めて……遙さんを見たとき……から……ずっと」
不思議と、素直に言葉が出た。
「居場所とか……良くわからない……けど……やっぱり……好きな人は……護り……たいと……思い……ます」
「なんで……?」
疑問符。
なんで遙さんは、そんなことを聞くのだろう。
「……好きなひと……を護る……のに……理由なんて……いらない……ですよ……」
当たり前の、はなし。
「慎くん……」
「居場所が……ないなら……僕が……あなたの……居場所に……なります。だから……ゴホッ」
不意に、何かがこみ上げた。
堪えきれず、吐き出す。
「慎くん?」
驚いた表情の遙さん。ごめんなさい、脅かしてしまって。
「ゴホッ……だか……ゴフッ」
おかしい、キモチワルイモノが、僕の言葉を遮る。
「しゃべらないで、すぐに、誰か……痛っ」
遙さんの顔が、苦痛に歪む。
「だい……じょうぶ……ごふっ、がはっ」
堪えきれない。
そうか。
僕は、吐血してるのか。
「大丈夫。大丈夫だからもうしゃべらないで!」
遙さんが、叫んだ。
必死の顔で。
自分の痛みなど、どうでもいいかのような、顔で。
「…………」
ごめんなさい。
僕は、声を出さずにそう、つぶやいた。
遙さんを、困らせてしまった。
本当に、ごめんなさい。
「ごめんね……」
でも、謝ったのは遙さん。
どうして?
その疑問を投げかけようとした瞬間、僕は再び激しい咳に襲われた。