君が望む永遠 Snap Shot 『悪魔が生まれた日を祝え』 Ver2.00

「おい、糞虫」
 昼休み、後ろから聞き慣れた声がした。
 振り返ると、そこにはチンクシャ……違った、大空寺が立っていた。
「あのな、大空寺。お前、俺の名前知ってるか?」
「鳴海孝之」
「そうだ。じゃあ俺を呼んでみ?」
「糞虫」
 笑顔で言うか。
 ……まあいい。これ以上くだらないことで貴重な休みを潰す必要はない。
 俺は振り返ると、足早に去ろうとする。
「待てコラ、アタシが呼んだのにあんで去るのさ」
「嫌な予感がするから」
「あ、あんですとーっ」
「じゃあ聞いてやる。なんだ?」
「プレゼント寄こせ」
 大空寺は、にっこり笑って両手を出した。
「はあ?」
 何言ってんだこの女は。
「黙ってプレゼントを寄こすさ」
 大空寺は両手を突き出してくる。
「なんで俺がお前にプレゼントを渡さにゃならんのだ」
「誕生日なのさ」
「え? お前の?」
「そう」
「ふーん。でもそんなこといきなり言われてもな。俺、今日がお前の誕生日なんて、初耳だぜ?」
「あんですと?」
 驚いた表情の大空寺。
「いや、驚かれてもな」
「じゃあ、後でいいさ。くれ」
「言い忘れたが、俺は今日だって知ってても、プレゼントなどやる予定はないぞ」
「あ、あんですと?」
「お前なあ、どこをどうすれば、お前にプレゼントを渡す方向になるんだ?」
「そりゃあ、日頃の働きに感謝して」
「それはねえ」
「あ、あんですとーっ」
 何言ってんだ。当然だろ。
「むがあああっ、じゃあ、いいっ」
 大空寺はプン、と振り向くと、どかどかと去っていく。
「おい、ちょっと待て」
 俺は思いだしたように、財布を探る。
「あにさ?」
「じゃあ、これやるよ」
 俺はポイッと、それを投げた。
 大空寺がそれをキャッチする。
 それは、5円玉にリボンを通したものだった。
「あんですと?」
「俺のお守りだ。一応効果はあると思うぞ。夏にあれだけ休んだりしても、バイトをクビにならなかったんだからな。あ、ちなみに要らなかったら返せ」
「やだ」
「え?」
「糞虫にはこの程度で十分さ。もらってあげるから感謝しなさい」
 大空寺はそう言って去っていった。
「……可愛くねえな」
 でもま、受け取るだけアレか。
 俺は何となく満足して、歩き出した。


 end








 後書きVer2.00

 感想掲示板に書いたネタです。一応要請もあったのでこっちに。
 短い話ですが、大空寺と孝之の関係はつかめてるのではないかと。
 では。

 2001.01.08 ちゃある

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