君が望む永遠 SS ラストシーン 〜そして、始まる〜 




 第5章 そして明日へ



  #1 慎二(5)


「ま、何はともあれ、良かったな慎二」
「ああ……うん」
 孝之の言葉に、俺は曖昧な返事を返す。
 一瞬だけ、横目で速瀬を見た。
 速瀬は変わらない調子で、涼宮と話している。
「なんだよ。嬉しそうじゃないな」
「いや、まだ実感が無いんだ。おかしいだろ? 自分から告白しておいてさ」
 はは、と苦笑。
「そんなものですよ、慎二さん」
 言ったのは茜ちゃん。
「そうですね。僕も茜さんに告白されたときは、何が起きたかと思いましたから」
「あ、秀一さん。それは内緒なのにー」
「え? そうでしたか?」
 驚いた様子で茜ちゃんを見る兄貴。
「うわー、茜から告白したんだ。今度教えてくださいね、秀一さん」
「あ、俺も聞きたいな」
「わたしもー」
 速瀬の言葉に、孝之と遙が同調する。
「だっ、ダメですっ」
 そう言った茜ちゃんは、既に顔が真っ赤だ。きっと告白したことを思い出して、恥ずかしくなってるんだろう。
「ま、とりあえず良かった良かった。本当に」
 孝之が言う。本当に嬉しそうに。
「……そうだな」
 ふと、速瀬を見る。
 まったく同じタイミングで、速瀬がこっちを向いた。
 速瀬は照れた表情で、僅かに目を逸らす。
 そして、僅かに微笑む。

「あ……」
 不意に言い様のない感情が、全身の震えとともにこみ上げてきた。
 速瀬が、俺の告白を受けてくれたこと。
 それは、事実なんだ。

「よおおっし!」
 ぐっ、と気合いを入れる。
「おわっ、急に叫ぶなよ」
「あ、スマン」
「やっと実感が来た、って感じだな」
 孝之が、微笑む。
「……ああ」
 俺も笑顔で返す。
「そっか、やっと慎二も一人に落ち着くか」
「ちょっと待て孝之。その言葉には語弊があるぞ」
「そうか? 何なら水月に、俺が今まで聞いた話をしてやってもいいが」
 孝之がニヤリと笑う。
「ちょ、ちょっと待て。それは困る」
「……ふうん、なにが困るのかなぁ?」
 すぐ背後で聞こえた声に、俺は心臓をわしづかみにされる。
「え、いや……その……」
「後でぜーんぶ聞かせてもらうからね、慎二」
「は、はい……え?」
 今。
 俺のこと。

 慎二って。

「どうしたの? なんかあたしの顔についてる?」
「いや……別に……」
「いやあ、早速アツアツですか。いいですねえ」
「……ぶっとばすわよ」
「お、久々に聞いたそのセリフっ」
「ホントだ。久しぶりだね」
「いやー、やっぱそのセリフは水月先輩らしいですね」
「そ、そうなんですか? 茜さん」
 いつの間にか、みんなが集まっていた。
「そうだ、慎二。みんなで写真取ろうぜ」
「え?」
「折角持ってきたカメラ。使おうぜ。六人揃った記念で、さ」
 孝之が微笑む。
「……そう、だな。そうしよう」
「じゃあ、向きはこっちね。みんなこっちに並んで並んで」
 水月が仕切り始める。
「茜が真ん中で、その後ろ秀一さん。茜の右にあたしで、左が遙ね。で、」
「遙の後ろが俺で、水月の後ろが慎二、だな」
「そういうこと」
 水月と孝之が仕切り、あっと言う間に五人が並び終える。
「慎二、準備できたよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
 そんなに早く言われても、カメラの準備には時間がかかる。
「仕方ないな、風間さん、慎二を手伝おう」
「あ、はい」
 そう言って孝之と兄貴が近寄ってくる。
「三人だからって、何もできないぞ?」
「いや、ちょっと男のナイショ話」
 孝之が、ニヤリと笑う。
「え?」
 兄貴が不思議な顔をする。
「……でな……」
 ぼそぼそと孝之が『作戦』を説明する。
「……マジでやんのか?」
「そ、それは……」
「いいじゃんか。仲良くやろうぜ、な?」
 孝之が俺と兄貴の肩を叩く。

 結局俺と兄貴は、孝之の『作戦』に乗ることになった。

「うし、準備完了!」
 孝之が女性陣に聞こえるように言い、兄貴とともに戻っていく。俺は三脚に固定されたカメラのファインダーを覗き、しっかりとフォーカスを合わせる。
 孝之と兄貴が、女性陣の後ろに立つ。ニヤニヤしている孝之と、緊張している兄貴。互いにこれから実行する『作戦』に思いを馳せているのだろか。
「じゃ、いくぞ」
「オッケー」
 速瀬が返事をする。
 俺はタイマーのスイッチを押し、水月の後ろへと走る。
 チカッ、チカッとゆっくりと点滅しているタイマーのランプ。
 それが早くなり、間もなくシャッターが降りようとした瞬間、孝之が叫ぶ。
「せーのっ」
 俺達三人は、孝之のかけ声と同時に前にいる女性陣を後ろから抱きしめるっ。
「え?」
「あ」
「きゃっ」
 女性陣がそれぞれ声を上げたその瞬間、フラッシュが焚かれた。



  #2 遙(5)


「まったく、びっくりさせないでよ」
「わ、悪い、速瀬……」
 水月の言葉に謝る平くん。
「……どうせ、兄さんの入れ知恵なんでしょ?」
「あ、やっぱわかる?」
「当然です。慎二さんや秀一さんが、そんなこと思いつくはずないですからね」
「……そりゃそうか」
 茜の言葉に、はは、と頭を掻く孝之くん。
 シャッターが降りる瞬間、私たちはいきなり後ろから抱きしめられた。
 ちょうど驚いたところが、フィルムに収められているはず。
 ……私は、何が起こったかわからなかったけど。

 結局そのあともう一枚、ちゃんと撮り直した。「ちゃんとした写真も欲しいし」という平くんの言葉に従って。

「……さて、これからどうする?」
 孝之くんがみんなを見回す。
「んー、今日は帰るわ。明日向こうに帰らないとならないから」
 水月が申し訳なさそうな顔で言う。
「そっか……」
「また休みが取れたら来るよ。ね、遙」
 残念そうな顔をした私に、水月は微笑む。
「……そうだね。また、会えるもんね」
「そうそう。電車でたった二時間よ」
「新幹線なら、東京から名古屋まで行けますね」
「……秀一さん。そういうツッコミは良くないと思いますよ」
「あ、水月。携帯の番号、教えてくれよ」
「あ、私も」
 孝之くんの発言で、携帯電話の番号とメールアドレス交換会が始まる。
「へえ、遙も携帯持ったんだ」
「うん」
 私の機種は、孝之くんと色違い。
「メール教えるのには、苦労したんだよな」
「そうそう、兄さんと二人がかりで」
「もう……それを言わないでよぉ……」
 確かに、まだメール打つのは遅いけど……。
「それに、最初は用件を全部件名に入れてきたんだよな」
「そうそう、本文何も書いてないのね」
「だ、だってそれは……」
 慌てて弁解しようとする。
 あれは、初めてだったから、件名を入れるなんてわからなかったんだよう……。
「あははっ、遙らしくていいじゃない」
 水月が笑う。
「あうう……ひどいよう……」
 そう言いながらも、私も思わず笑う。
 そして、つられるようにみんなも。

 ホントに。

 ずっと一緒だったみたいに、私たちは笑える。

 つらいこともあったけど。
 時間が、そのつらさを薄めてくれたから。
 私たちは、その上に嬉しさと楽しさを上書きできる。

 ね、みんな。

 私たち、ずっと一緒だよね。

 ずっと……仲間、だよね。

「新・仲間記念日……」
 呟いた私の言葉に、孝之くんの顔が青ざめる。
「え? 『新』って?」
「あのね……むぐ」
「あははは、何でもないよな、遙」
 水月の問いに答えようとした瞬間。孝之くんが私の口を塞いだ。
 ……そんなに、はずかしいのかな……。

 ねえ?



  #3 茜(4)


「じゃ、ここで」
「うん。また」
「そうですね。また会いましょう」
 私たちは、すぐに三方向に別れた。
 家に向かう姉さんと兄さん、水月先輩の家に向かう先輩と送っていく慎二さん。そして、秀一さんと私は駅に向かう。
 それぞれのカップル同士で、バラバラに。
「今日は本当に楽しかったよ」
「そうですか。良かった」
「……ま、鳴海君には、少し嫉妬したかな」
「え?」
 ドキッとする。
 秀一さんには、私が兄さんを好きだったことはまだ話してないのに。
「茜さんと楽しそうに、普通に話しているのを見てるとね。やっぱり、そう思うんだ。僕もまだ修行が足りないね」
「ううん……嬉しい」
「え?」
 私の言葉に、秀一さんが問い返す。
「秀一さんが嫉妬してるって、不謹慎かもしれないけど、嬉しいです。だって秀一さんって、いつも大人ぶってるところあるじゃないですか」
「……本当に茜さんや他のみんなより年上なんですが」
「そうなんですけど」
 こう、大人しいっていうか、そんな感じなんです。
 兄さんや慎二さんと比べてるのが、間違ってるのかも知れないけど。
「僕もね、女性とつき合った経験はほとんどないから、戸惑ってるんですよ……友達も、少ないし。だから僕は『大人ぶっている』んじゃなくて『踏み出せない』だけなんです」
 秀一さんは前を向いたまま、そう言った。
 秀一さんの前髪が風になびく。
 彼の優しい笑顔も好きだけど、真面目な顔もちょっとかっこいいな、なんて思ってしまう。
「ま、これから茜さんやみんなと、いろいろな経験を積めればいいなって、思いますよ」
「……小説のネタに使えるから?」
「あ、その手もありますね」
 二人で笑う。
「いつか……」
「え?」
 秀一さんが遠くを見る。
「いつか、茜さんを主人公にして小説を書きたいなって、思います。僕が出来るのは、文字で表現することだけだから」
「私が……主人公?」
「ええ。そのときは、OKしてもらえますか?」
 秀一さんが、私の方を向いた。
 真剣な瞳。

 けれど、その顔は誰よりも優しく。

「……はい」
 私は顔を赤らめ、コクンと頷いた。
「じゃあ僕はもっと、茜さんのことが知りたい」
「……え?」
「これまでのことも、これからのことも。すべてひっくるめて涼宮茜を知りたいと思います」
 そう言って。

 秀一さんは、不意に私を抱きしめる。

「この温もりも、この香りも……」
「秀一さん……」
 私も、彼に応えるように抱きしめる。
「……ここまでは、書きませんけどね?」
「私も、こんな事書かれるのは困ります」
 そして苦笑。

 私たちは、抱き合ったまま二人で笑う。

 いいよ、秀一さん。
 今までのこと、全部教えてあげる。
 つらいことも、悲しいことも。
 ……言いたくないこともあるけど。

 でも、それでも。
 秀一さんに知っていて欲しいから。
 だって、これからずっと、一緒に歩いて行くんだから。

 私は秀一さんと笑いながら、私たちの未来を思い描いていた。



  #4 水月(5)


「今日は大変な日だったね」
「あ、ああ……」
 あたしの言葉に、慎二は照れた調子で答える。
 さっきから慎二は、妙にぎこちない。
 昼間会ったときとは、まるで違う。
「ねえ、慎二」
 あたしは慎二に向き直る。
「あ、な、何? 速瀬」
「さっきから慎二ってば、おかしいよ? それに、あたしのことは呼び方が違うでしょ?」
「え?」
「あたしのことは、『水月』って呼んでくれなきゃ。あたしも……慎二のこと名前で呼ぶようにしてるんだから」
「あ、ああ……わかったよ。速瀬」
「み・つ・き」
「ああ……み、水月」
「はい、良くできました」
 あたしはニッコリと笑うと、再び歩き出す。
「……緊張……してるんだ」
「ああ……おかしいだろ? 別に今まで誰ともつき合ったことが無いわけじゃ、ないのにな」
 慎二はそう言って苦笑する。
「んー、なら、ちょっと嬉しいかな」
「え?」
「慎二にとって、あたしが特別だったってことになるでしょ?」
「ああ……そうだな。正直言って、そう。は……水月は、俺にとって特別な存在なんだ。初めて出会ったときから」
「三年で、同じクラスになってから?」
 確か、あたし達が顔を合わせたのは三年が初めてだったよね?
「いや、違う。二年の時、俺は水月に会ってるんだ」
「え? いつ?」
 記憶にない。
 あの頃は一日の八割くらいが、水泳だったから。
「覚えてないかもしれないけど……二年の夏、坂下にある木の下で、雨宿りをしたことがあるんだ。俺と、水月は」
 え……?
 記憶を手繰る。
 不意の通り雨にやられたことは、一度や二度じゃない。だから、坂下の木は覚えていても、いつのことかまでは記憶が蘇らない。
 まして、八年前の話は。
「……ごめん、思い出せない」
「いいんだ……そのときはお互いの名前も言わなかったし。ただ、その頃から水月は髪長かったろ? だから俺の方はすぐに知ったんだ。ま、それから八年。飛び飛びではあったけど、ずっと好きだったんだな」
 慎二はそう言って苦笑する。
「……そっか、ずっと……あたしは慎二に想われていたんだね……」
 気づかなかった。
 それはきっと、慎二の想いに気づく前に。

 自分が、孝之を好きになっていたから。

「ずっと見てたから、水月が孝之に惹かれていくのも、薄々感じていた。だから三年の夏、孝之が涼宮とつきあい始めたときは、ホントに喜んだよ。『これで俺にも、チャンスが出来た』って……でもな……」

 それ以上のことは、慎二は言わなかった。
 それからの三年間は、つらいことばかりだから。

「時間が、すべてを解決してくれるなんて言わないけど、さ……」
 あたしは、慎二に向かって呟くように口を開く。
「これだけの時間をかけて、やっとみんなが元通りになったんだから……もっと時間をかければ、今まで以上に強い絆が出来ると思うんだ」
「水月……」
「まだ正直言って、慎二とずっとつき合っていけるかはわからないけど、さ。ゆっくり歩いていこうよ。時間は、あるんだから」
 あたしはそう言って、慎二に微笑みかける。
「そう……だな。時間はあるんだもんな」
 慎二も微笑む。その笑顔は、余計な力が抜けた感じで、優しい。
「うん……じゃあ、最初の一歩……」
 あたしは慎二に一歩近づくと、ゆっくり目を閉じる。
 そしてあたしたちは。

 初めての、キスをした。



  #5 孝之(6)


「やっぱ、茜ちゃんたちと一緒の方が良かったか?」
「……ううん。きっと二人で話したいこともあると思うから、これでいいんだと思うよ」
 俺の問いに、遙が答える。
「それに……私も、孝之くんと二人で帰りたかったから」
 照れた微笑み。
 つき合って四年経つけど、こういうところは変わらない。

 遙はかわいい。

「また、こうやって六人で会えればいいな」
「うん」
「でもな、みんな結構忙しいから、時間合わせるの大変でな」
「孝之くんも、頑張ってるしね」
「……ま、引っ越しや、結婚の資金を貯めないとならないからな」
「え?」
「遙が卒業するまであと一年と半分。ってことは、あと一年半しか無いってことだからさ」
「孝之くん……」
 遙が、優しい顔で俺を見る。
「……俺だって、何も考えてない訳じゃないんだぞ」
「うん、わかってる。だから、嬉しいなって」
「え?」
「ちゃんと、先のこと考えてくれてる。だから、嬉しいの」
「そんなの……当たり前だろ? 俺は遙とずっと一緒にいるよ」
「……それは、違うよ」
 俺の言葉を遙はやんわりと、けれど強い言葉で否定する。
「ずっと一緒にいるのは、当たり前じゃないんだよ。ある日突然、事故に遭って昏睡状態になるかもしれないんだよ」
 それは、実際に体験した者の言葉。
 最終的に遙を選んだとは言え、遙が眠っている間に水月とつき合ったのは動かしようのない事実。
 遙が目覚めたらはっきりとつき合っていると言おう、たとえ許してくれなくても謝ろうって水月と話してたのも事実。
 ずっと一緒にいられなかったという、真実。
「……だから、私は思うの。『今日も孝之くんがいてくれてありがとう』って。いつも感謝してるんだよ」
「……遙」
「ね、孝之くん。今日も一緒にいてくれて、ありがとう」
「……それこそ違うぞ、遙」
「え?」
「俺は何度だって言ってやる。『俺は遙とずっと一緒にいる』って。『それが当たり前のことなんだ』って。そりゃ、これから何があるかなんてわかんない。だから当たり前の日常に感謝するのは、間違ってないと思う。でも、俺に感謝する事はない。俺は俺の意志で遙を愛してる。そう決めたんだ。俺はずっと、遙と歩いて行くって決めたんだ。遙が嫌だって言っても、俺は遙と歩いていく。それが当たり前なんだ。それが当然なんだよ」
 そう。
 俺に足りないのは、強い意志。
 みんなに笑って欲しいなんて出来ない。それは、あのときに知ってしまった。
 俺に出来るのは、大切な人を守ること。
 だから、時には誰かを傷つけても。
 俺は、遙と一緒に歩いていく。
「たかゆき……くん……」
 気がつくと、遙が泣いていた。
「あ、なんか俺、言い過ぎたかな……」
「ううん……嬉しい」
「え?」
「孝之くんが……そんなに私のことを想ってくれてる……」
「だから、当たり前だろ」
「うん……ごめんね……」
「ったく……」
 俺は遙の肩を抱き寄せる。
「遙はすぐ謝るんだからな」
「うん……ごめんね」
「……言うと思った」
「……あはは」
 遙の照れた笑い。

 いいだろ? 遙。
 俺達は当たり前のように愛しあっても。
 明日なんて何があるかわからない。だからといってそれに怯えてたら、何もできない。
 当たり前の愛を積み重ねて。
 ずっとずっと、高く積み上げて。
 誰にも負けない愛を、二人で創り上げよう。

「……なんてな」
「え?」
「いや、独り言」
 俺は自分の言葉のクサさに苦笑する。
 そしてそれをごまかすかのように、遙を抱きしめる。
 遙が目を閉じる。
 そして俺達は。

 今日初めての、キスをした。





 エピローグ ラストシーン


「孝之くん、封筒届いてるよ」
「お、サンキュ……慎二からだ」
 A4サイズの封筒を手に、俺達は家に入る。

 街はもうすっかり秋の景色だ。俺達はあれ以来会っていない。ま、個別で会うことはあるけど。
「……ああ、できあがったのか」
 封筒の中には、あの夏に撮った写真。
「わざわざ引き延ばしてくれたんだね」
 俺の隣で、遙が写真を覗き込む。
 写真は四人で撮ったものと、茜ちゃん達を交えて撮った二パターン。それぞれ引き延ばしたものと、通常のサービス判が入っている。
「律儀な奴だな」
「私の家にも届いてるかな」
「届いてるんじゃないか?」
「じゃ、額縁買ってこないと」
 どんなのにしようかな、と考え始める遙。あんまり写真立てや額縁は買ったこと無いから、俺にはピンとこないけど。
 ……俺も、買ってくるかな。
 折角みんなで撮った、写真だもんな。
「そうだ、これから見に行こっか」
「うん。私も今そう言おうと思ったの」
「そっか、やっぱ」
「ラヴ・テレパスィーだねっ」
 ニッコリと、遙が笑う。
「なんだ、俺が言おうと思ったのに」
「ふふっ、たまにはね」
「ま、いっか。さて、行こうぜ」
「うん」
 俺達は、そう言って立ち上がる。

 テーブルに置かれた写真。
 四人で写る写真の上に、六人で撮った写真が重なる。
「これからは、六人だな……」
「え? 何が?」
 俺のつぶやきに、遙が問いかける。
「仲間が、さ」
 そう。
 俺達四人の物語は、ここで幕を閉じる。

 そして、これから。

 俺達六人の物語が、始まるんだ。


 おわり。






 君が望む後書き

 ふう。
 まずは書き上げましたよ、というご報告を。
 そして。
 ここまで読んでくれて、ありがとうという思いを。
 僕の君望は、ここでひと区切りです。
 でも、僕の君望が終わるわけじゃありません。
 そう簡単には、終わらないですよ?

 ま、とりあえず今回の話の要の一つは、秀一くんというオリジナルキャラではないでしょうか。
 一応慎二の兄という設定にしているものの、中身はオリジナルですから、やっぱり受け入れられないんじゃないかとおびえております。
 でも、どうしても茜に恋人をつくりたかった。でも俺の中では慎二は水月とつき合うことが確定していたし、剛田はうーん……と思ってしまったので。
 一応茜ファンのために、キスは封じ手としておきましたが、あんまり効き目無いんだろうなあ……。

 後は四人ですが、基本的に遙エンドの写真がモチーフになっています。ホントはここが一番書きたかったはずなんですけどね。水月の肘打ちを入れるために慎二君には苦労してもらいましたが、結果としてはいいかな、とか。

「みんなで幸せに」という思いを込めて書きました。メインキャラ全員が幸せになってもいいんだよね? 孝之が望んだ、みんなの笑顔。それが、僕の望む君望です。

 最後に、支えてくれたみなさま。特に「君望は嫌い」と言いつつも読んで感想をくれたあきこさんと、
僕の師匠である維如星さん。並びに某ircで貴重なアイディアをくれたり愚痴を聞いてくれた望月さん(ぶちょ、のがいいかな)、ぶどうさん、ゆ〜りさん、そして匿名のMさんに感謝を。

 2002.11.14 ちゃある

 2002.11.15 修正

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