例えばこんな、別れかた 〜不倫〜

「すまん。前から言おうとは思ってたんだ……」
 彼は両手を合わせて謝ってきた。
 私も薄々とは感じていたけれど、やはり事実を聞かされると衝撃は大きい。
「悪いが、これっきりにして欲しい」
 何で……?
「遊びだったの……?」
「違う、俺は、本気だった。でも……子供が、出来たんだ」
「え……?」
「おかしいだろ? 6年目にして、突然だ」
 彼は、苦笑する。
「やっぱ、神様が『こういうつき合いはしちゃいけない』って言ってるんだと、思うんだよ」
「ずるいな……」
「え?」
「ずるいよ。やっぱ」
 私の言葉にたじろぐ彼。
「お、お金なら、出す。だから……」
「違うよ。あなたの奥さんは、そうやってあなたの想いを繋ぎ止められるんだもん。私は勝てっこないじゃない」
「あ……」
「言っておくけど、私はお金なんかいらない。ホントはあなたの想いがあればいいの。それだけがあれば、良かったの」
 いつもより饒舌になっている自分がいた。
 でも、止まらない。
「でも、それが手に入らないなら……私は、何もいらない」
「……みゆき……」
 私の名を呼ぶ声を聞きながら、ゆっくりと、自分の想いを冷ましていく。
 しばらく、互いに無言の時間が続く。

 やがて、私は口を開いた。
「ありがと、お金の話、してくれて」
「え?」
「これで、あなたに幻滅できるわ。あなたも、そう言う男だったねって」
「みゆき……」
 私は彼に向かって、微笑む。
「ね、最後に、私の目を見て」
 最初から、彼は私の目を見て話してはくれなかった。
 後ろめたい気持ちはわかる。でも、大切なことだから、ちゃんと私の目を見て話して欲しかった。
 本当に私を愛してくれていたのなら。
「……ああ」
 彼は私の目を見つめる。
 戸惑いの眼差しで。
 私は薄く笑う。
「さよなら」
 冷たく言い放つと、振り返った。
 そのまま歩き出す。
「みゆき……」
 彼が、私の名を呼ぶ。
 でも、振り返らない。
 ここで振り返ったら、全てが台無しになってしまうから。
 彼に、この涙を見せるわけにはいかないから。

 私は両目から涙を流したまま、まっすぐ前を向いた。
 流れる涙を拭いもせず、歩き続けた。

 彼から、見えなくなるまで。


 end









 誰が望んでいるのかようわからない後書き

 はい。えーと、前の作品(〜聖夜〜)を彼女に見せたらえらくブルーになられてしまい、
「やっぱこの企画やばかったかな」と思ってます。ちゃあるです。
 今回は「かっこいい女の子」を目指して書いてみました。どうですかね?
 とりあえず、行き着くとこ(このペースで書けなくなるとこ)まで行ってみようと思います。もしよろしければ、感想などいただければ励みになります。
 では、次の作品で。

 2001.11.30 ちゃある

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