「ついてない」 「……ついてねえな」  つぶやき、空を見上げる。  建物の隙間から、小さく星空が見えた。 「くっ……」  痛みに、顔をしかめる。  腹部には、ナイフ。  抜いたら死ぬと思って抜いていないが、それでも血が止まらない。  やっぱり俺は死ぬんだろう。  路地裏のゴミに寄りかかりながら、空を見上げる。  建物の隙間から、小さく星空が見えた。 「……ま、こんな最後もいいか」  少なくとも、彼女は、助けられたし、な。  胸ポケットから、煙草を取り出す。 「……ついてねえな」  煙草は一本だけあったが、ライターがない。  仕方なく、火を付けず口にくわえる。  空を見上げる。  建物の隙間から、小さく星空が見えた。  そして、彼女の顔。 「……そんなこともない、か」  最後に幻覚でも、彼女の顔が見られたなら。  それは、幸せなんだろう。 「サトシっ、しっかりしてっ」  幻聴も聞こえる。まあ、リアルな声だ。 「大丈夫だから、今救急車来るから、死んじゃダメだよっ」  ……なんだ、ホンモノか。  ……ついてねえな。  彼女に、こんな格好悪いとこ、見られるなんて。  end  誰も望まない後書き  あー、頭回ってないですね。ってことで突発作品です。