俺が望む後書き 「グリーングリーン」SS#1 いもうと

 SS#1.5 バスの中で

 ゴトン、ゴトン……。
 バスが、山道を抜けていく。台風の影響か、来たときよりも道が悪い気がする。
「はあ……」
 あたし、朽木双葉は、窓にもたれかかってため息をついた。
「新しい、式神、か……」
 高崎祐介には、ああ言ったけど、そう簡単には行かないんだよね。
 創り上げる前には、それなりの準備がいる。
 まずは、媒体。
 木を媒体にすると、あまり遠くへ行けなくなってしまう。
 花を媒体にすると、寿命が短くなる。
「やっぱ、サボテンかな……」
 幼い頃に、サボテンを選んだ理由は特になかったけど、今は、便利だと思う。
 持ち運べるし、簡単に枯れないし。
「困ったな……」
 でもきっと、創らなければならない。朽木の家には、若葉は自分をかばって眠りについたことにするからだ。
「十年、か……」
 若葉を創ったのが、七歳の時。それから若葉は私の初めての友達として、妹として、従者として、私と共に生きてきた。
 それが、高崎祐介の出現により、崩れた。
 若葉は、あたしとの契約を破り、高崎に恋をした。
 これでは、式神失格だ。
「壊れるのは、あっと言う間ね……」
 でも、正直言えば、これで良かったと思う。
 これで若葉は、普通の女の子のように振る舞えるから。
 恋をして、キスなんかして。
「はあ……」
 もう一度、ため息。
「まさか、若葉に先を越されるとはね……」
 ずっと女子校で過ごしてきた今までを変えたくて、無理を言って編入してきた。
 表面では、恋を否定してきたけど、本当は逆だった。
 自分が一番、恋をしたかったのに。
 ちょっといい男だな、と思ったヤツもいたのに。
 高崎祐介。
「……なんであたしじゃなく、若葉を選ぶかな」
 やっぱ、スタイルなのかな。
 自分が理想とする体型を思い、若葉を創った。
 胸はCカップ。ウエストは細くて、でも、ヒップはそれなりに……。
「はあ……」
 三度目のため息。自分の貧弱な胸を見て、ちょっと悲しくなった。
 来年。共学化されたら、あたしは必ずここに戻ってくる。
 高崎祐介と、若葉に会うために。
 そして、いい男を探すために。

 バスは、山道を下っていく。

「また、来るからね……」
 窓からほんの僅かだけ見えた校舎に向かって、あたしはつぶやいた。

 end

 はい、「グリーングリーン」のSSとしては初になります。
 いきなりお話から入って申し訳ありません。書き上げた直後に、双葉の書き込みが足りないと思って急遽追加しました。でもホントに短いので、後書き代わりに置いてみました。どうですかね?
 設定的には若葉のエンドムービーの直後、という設定になります。何はともあれ、若葉ファンの俺様としては、このエンドを書かずにはいられませんでした。
 これを書くきっかけは、「双葉は、若葉をどう思っているか」ということでした。若葉を召使いのように扱う双葉が(当然と思っていても、若葉ファンの俺様としては)どうしても気にくわなかったんです。
 ですからこの話では、自分が納得するようにフォローを入れる目的があります。当然、若葉には幸せになって欲しいのでその辺のフォローも入れてあります。
 とりあえずは、若葉エンドをメインとして話を展開しようと思ってます。うまく行くか(そもそも書けるか)わかりませんが、よろしくお願いします。
 
 では、ありきたりですが、感想など戴ければ幸いです。

 2001.11.21 『君が望む永遠』はどうした? ちゃある

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