君が望む永遠 Side Story 〜聖なる夜に君を想う 短縮版〜

 目を覚ますと、一時間十分寝過ごしていた。
「やばっ」
 俺−鳴海孝之って名前だ−はダッシュで家を出ると、バイト先へと急いだ。

 俺のバイト先は、「すかいてんぷる」というファミリーレストランだ。俺はダッシュで飛び込んだが、一時間の差は埋めようが無かった。
「鳴海君には、これをお願いいたします」
 と言って店長に渡されたのは、サンタクロースの衣装。
「寝坊の罰、と言うわけではありませんが、これを着て、宣伝をお願いいたします」
「はあ」
「これを着られるのは、私か、鳴海君しかいないんですよ」
 ああ、それは何となくわかる。
 他は中を除くと、みんな女性だものな。
 ……チビの。
「なにこっち見てるのさ」
 同じアルバイトをしている大空寺に、睨まれた。
 チビ、という意味で視線を送ったのがばれたらしい。
 ……鋭いな。
「では、よろしくお願いいたします」
「はい」
 俺は頷くと、着替えるために移動した。


「いらっしゃい! すかいてんぷるのケーキは美味しいですよ〜」
 俺はサンタの格好をして通りでチラシを配る。まさか自分がこんな格好をするとは思ってなかった。
 誰かが「『サンタクロース』じゃなくて『さんざん苦労する』だよ」と言っていたことを思い出す。
「べリー苦しみますってか」
 小声でつぶやく。今のは上手いかな。
「かなりだめ、ですね」
 背後で声がした。慌てて振り向く。
 そこには、涼宮茜が立っていた。
「ど、どうしたの?」
「うん、姉さんと一緒に、すかいてんぷるに来たんだけど、鳴海さんはこっち、って聞いたから」
「あ、そうなんだ」
「孝之くん。こんばんは」
 茜の背後から、涼宮遙が現れた。こう言うのは恥ずかしいが、俺の、彼女だ。
「おう、遙」
「ふふっ、楽しそうだね」
「おう、楽しいぞ。そうだ、サンタさんがお二人にプレゼントをあげよう。
「えっ、ホント?」
 姉妹の声がハモる。
 俺は背負った袋を開く。
「はい、どうぞ」
「なーんだ、ティッシュじゃない」
 ははっ、と俺は笑う。
 この二人が相手だと、つい茶目っ気を出してしまう。
「ありがとう、孝之くん」
「あ、いや」
 逆に改まってお礼を言われると、困るな。
「じゃあ、私たちこれで帰るから」
「ああ」
「孝之くん。おうちで待ってるね」
「おう」
 遙の笑顔に、なんかやる気が出てきたぞ。
 俺は二人を見送ると、再びチラシを配り始めた。
「はーい、すかいてんぷる特製のクリスマスケーキはいかがですか〜」


 バイトが終わると、俺はキープしてもらっていたケーキを手に部屋に戻る。
 部屋は、明かりがついていた。
「お帰りなさい。孝之くん」
 部屋では、遙が待っていてくれた。
 部屋の飾り付けをして、料理も作っていてくれた。
「ただいま、遙」
 俺はクリスマスケーキを遙に渡す。遙はそれを箱から取り出し、テーブルの中央に置く。
「よくこれだけの料理をつくれたね」
「うん……あのね、茜が、手伝ってくれたの」
 遙が、照れたように言う。
「そっか、後で、お礼言わなくちゃな」
「うん。そうして。茜も喜ぶと思うから」
 俺たちはそれから、ゆっくりと夕食を取り、二人の時間を過ごした。
 それから二人でシャワーを浴びると、遙の髪が乾くまでの間、テレビを見たり、ゲームをしたりして過ごす。
 気がつけば、午前二時を回っていた。
「そろそろ、寝ようか」
「……うん」
 遙は、かなり眠そうだ。
 俺たちは軽くキスを交わすと、ベッドに入った。
「ふふっ、孝之くんと寝られるなんて、幸せ」
「俺もだよ」
 遙はほほえみながらも、あっという間に寝息を立て始める。
 ずいぶん疲れたんだろうな。
 遙は俺のシャツの裾を掴んだまま眠っている。
 俺は遙の寝顔にキスをする。
 そして、ゆっくりと眠りにつくのだった。


 end
















 君が望む後書き

 ちょっと「クリスマス雑文祭」(http://www.chokai.ne.jp/m-aiba/hobby/christma/index.html)対応で書いてみました。一応『君が望む永遠』をやったことが無くても大丈夫なようにはしていると思います。ってか、
本当にキャラを借りてきただけです。
 たまにはこういうのも、いいんじゃないかな、と。
 一応『拡張版』(完全版?)を書く予定なので、そちらも待っていてくれればと思います。
 では。

2001.12.04 ちゃある

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