君が望む永遠 サイドストーリー「頑張らなくっちゃ〜遙の一日〜」Ver1.00
#2
橘町に着いた。
電車が空いていたおかげで、ゆっくりと座ることができた。これでまた、少しは歩けると思う。
「まずは……本屋さんっと」
私は駅前の本屋さんに入り、まっすぐ参考書売場へと向かう……前に、絵本売場で立ち止まった。
「あ、この作家さん。新しいシリーズ描いたんだ」
一冊の本を手に取る。私が好きな作家さんの、新しい絵本。
うう……欲しいなあ……。
本の値段と、財布の中身を見比べる。
これを買って、参考書を買うと…………。
うう……。
悩むこと15分。
私はその絵本を手に取ったまま、参考書コーナーへと足を運んだ。
「確か……こっちだと思うけど……」
参考書を無事に買った後、私は孝之君のバイト先を探して歩いた。
えーん、どこだかわかんないよー。
道路できょろきょろする私。
どうしよう?
人に聞くのも……なんか恥ずかしいし……。
「何かお困りですか〜?」
「ひゃっ」
不意に後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。
そこに、女の子が立っていた。身長は、私よりも低い。歳も、多分私より若いだろう。
「え、あ、あの……『すかいてんぷる』っていうお店を探していて……」
「あ、そこなら今から行くところですので、一緒に参りましょう」
女の子はにこっと笑う。
「え? で、でも……」
「心配ご無用」
女の子は私の手を引くと歩き出す。
「あっ、あのっ」
「どうかしましたか?」
「……あまり……早く歩けないんです……」
「まことかっ」
「は、はい……」
「これは済みませんでした。ではゆっくり歩きますので、ついてきてください〜」
「あ、はい……」
女の子はそう言うと、ゆっくりと歩き出した。
不思議な子だな。
角を曲がると、そこに『すかいてんぷる』はあった。
「では私は先に参りますので」
女の子はお辞儀をすると、走り出す。
「あ、ありがとう」
走り去る女の子に、お礼を言った。女の子振り返って手を振る。
「あ」
そのまままっすぐ行ったら。
ゴン。
女の子が前を向いた直後に電柱に激突。
「ぐ、ぐおおお……」
「だ、大丈夫?」
額を押さえてうずくまる女の子に私は近寄る。
「も、もののふですゆえ〜」
もののふ? 武士?
聞き間違いかな?
私はハンカチを、少し血がにじんでいる女の子の額にあてる。
「か、かたじけない」
「ううん、こっちこそごめんね」
「もう、大丈夫ですので」
「そう? 病院とかは?」
「いえ、バイト先に救急箱が備えてあるので大丈夫です〜」
「そう? 本当に大丈夫?」
「はい、もう大丈夫です〜」
女の子は立ち上がると、私に深く頭を下げてから『すかいてんぷる』に入っていった。
あ、従業員の子なんだ。
孝之君と、同じ職場なんだね。
私も立ち上がると、『すかいてんぷる』の入り口に向かった。