君が望む永遠 サイドストーリー「頑張らなくっちゃ〜遙の一日〜」Ver1.00
#4
私は、買ってきた絵本を読みながら待つことにした。
絵はシンプルだけど、決して悪い訳じゃなく、むしろ控えめにすることで、良さを出しているように見える。言葉も、伝えたいことをわかりやすく書いている。
私は何度も読み返した。一字一句を、なぞるように。
こういう絵本を、描けたらいいな。
私は素直にそう思う。
こういう絵本を書いて、たくさんの人に読んでもらいたい。
それで、絵本から何かを得てくれたら、それほど素晴らしいことはないんじゃないかな。
そのために、まず大学へ行かなくちゃ。
参考書だって買ったんだもんね。
孝之君も、茜も、平君も応援してくれるんだもんね。
頑張らなくっちゃ!
「うん」
私はぐっ、とガッツポーズ。
「遙……何やってんの?」
そのまま顔を上げると、孝之君がいた。
もしかして、今の見てた?
かぁぁぁっ。
瞬時に顔が赤くなっていくのが、自分でもわかった。
「ああああのっ、何でもないよっ」
「そう、なら……いいけど。あ、もう終わったからさ」
「うん」
見ると、孝之君は既に普段着に着替えていた。
「じゃ、行こうか」
そう言って孝之君はレシートを取る。
「あっ」
「いいから」
孝之君は私に微笑みかけると、一足先にレジへと向かった。
私も荷物をしまうと、孝之君を追いかける。
「はい、合計で2万1千円になりま〜す」
「そんなにするかっ。ちゃんとレジ打てっ」
レジでは、孝之君とさっきの子が、また言い争っていた。
「大空寺さん、鳴海さん。お客様の前ですから」
壮年の男性が、二人を止めに入った。店長……かな?
孝之君もさっきの子……大空寺さん? も、落ち着いたみたい。
「じゃ、お先に失礼しまーす」
孝之君は男の人に挨拶をすると、私のとこに戻ってきた。
「悪い。じゃ、行こっか」
「うん」
「あ、これ、俺が持つよ」
孝之君は私が下げていた本屋さんの紙袋を取ろうとする。
「いいよ」
「いいって」
孝之君は笑顔のまま、紙袋を持った。
「ほら、結構重いじゃんか」
「でも、私の本だし」
「ま、適材適所って言うことで」
「うん?」
「力仕事は、俺の方が得意だからさ。こう言うのは俺がやったほうがいいじゃん? 代わりに遙は……そうだな、ミートパイを焼いてくれたり」
「え? あ、うん。また……作るね」
「ああ、楽しみにしてるよ」
私はちょっと嬉しくなって、孝之君の腕に自分の腕を絡めた。
孝之君はちょっと戸惑ったような顔をしたけど、私に歩幅を合わせて歩き始める。
なんか、恋人同士みたい。
あれ? もう恋人同士だったね。
苦笑。
「ん? どうかした?」
「ううん、なんでもない」
私は首を振ると、孝之君の腕を、更に強く抱きしめた。
私の隣に孝之君がいる。
その事が幸せだと、強く感じながら。